【ましこのひと vol.15】 開催レポート:これから出会う益子の「未知の日常」ツアー「第1回土祭の記憶から「未知の日常」をたどる」
令和8(2026)年度の取組みとして、益子町では、移住を希望されている方や益子町に移住して日が浅い方を対象に、テーマを設定して益子町の魅力を一緒に探求していくツアーを開催しています。この記事では、ツアーの企画と案内人を務めていただいた簑田理香さんに、6月に開催した第1回交流ツアーのことを綴っていただきます。
ツアーの折り返し地点・藍の道の「土舞台」にて。
案内人:簑田理香
熊本県出身、益子町在住。益子町のアートイベント「土祭」2009年広報サポート・2012事務局・2015プロジェクトマネージャー・2021広報ディレクター。益子の人と暮らしを伝える『ミチカケ』(2013-2018)編集人。
未知の日常。聞きなれない言葉ですが、「益子の未知の日常」と聞いて、どんなイメージが広がりますか? 2021年に益子町の観光ブランドコンセプトコピーとして作成した言葉です。リゾート観光に使われる「非日常」とは違って、多様な人が自らのふだんの暮らしを大切に営んでいる益子では、多層的に豊かに広がる日常こそを大切に、町外の人とも分かち合おう、そんな思いが込められています。詳しくは、こちらをお読みください。
さて、第1回のツアーでは、真岡鐵道益子駅から、益子焼の販売店やギャラリーが並ぶ城内坂に向かう通りの旧市街地エリア「本通り」を歩きました。2009年に益子町のアートイベント「第1回土祭/ヒジサイ」の会場となって以来、空き家・空き店舗の活用が少しずつ始まり、城内坂とはまた違った魅力が芽生えています。
今回のツアーの広報ビジュアル

イラストは三毛紅葉さんにお願いしました。益子に移住して2年目で、建築・デザインのリモートワークを行いながら、シンガー・ソングライター、ミュージシャンとしても(「結構生活」)精力的にライブ活動などを行っています。首都圏にも近い益子は、そんな2拠点生活も可能です。
第1回土祭が目指したものと益子の暮らし
本通りを今回のフィールドとした理由。それは、益子の魅力として語られる「ていねいな暮らし」「里山の農的生活」ということを掘り下げていくと、17年前の第1回土祭のコンセプトと、根っこのところでつながるのでは? そんなことを、参加者の皆さんに伝えながら通りを歩いて、「益子で暮すとしたら、どんな暮らし方ができるか、どう生きていきたいか?」を、それぞれがあらためて考えてみる機会にできればと考えたからです。
ツアーの最初にお話しした「第1回土祭」のコンセプトとポスター
当日の参加者は・・・益子に移住して4ヶ月、移住して数年、地域留学生として滞在中、隣町に住み益子で働きながら益子で家を探している・・・など、いろんなバックグラウンドを持った方々が、駅舎に集まり自己紹介や今日の予定を確認しあった後、折り返し地点の「藍の道・土舞台」を目指して歩きます。
ツアーコース
益子駅舎からスタートして土舞台へ。折り返して「ましこのま」にてランチとお話会
当日は、大きめのスケッチブックに、訪れる場所ごとに、第1回土祭との関わり(何に会場になり、どんな展示やイベントが行われたか)を簡潔に記したものを用意して、紙芝居的に活用しながら歩きました。当日は、案内人である私はほとんど写真が撮れなかったので、いくつか解説に用いたスケッチブックの写真を紹介し、ツアーでお話ししたことも簡潔に書いておきます。
元栃木緑建・現ヒジノワcafe&space
現在、地域の有志がボランティアで共同運営しているヒジノワcafe&spaceは、120年ほど前に民家として建てられ、その後さまざまに活用され空き家になっていたものを、第1回土祭の展示会場とすべく、町職員と住民、作家などが改修し、4名の土を用いた表現を行う美術家の展示会場となりました。土祭終了後に、町と大家さんの契約終了を受けて、また空き家に戻すのはもったいないと、有志がカフェと展示やイベントスペースとして運営を始めて16年目を迎えています。
ヒジノワの東側の壁にかかるビルボード
土祭で行われた企画の1つに、ビルボードの設置があり、そのいくつかは今でも残っています。町内のいくつかの家庭に残されていた大正時代から昭和30年ごろまでに撮影された写真を土祭のプロデューサーや事務局が借り受け、大きく引き延ばして設置したものです。ヒジノワの壁に設置された写真は、お隣の岩下太平商店の正月明けの初荷の様子。以下、ツアーでお話ししたことを簡潔に記しておきます。
●鉄道が敷かれるまでは、馬による運搬と河川交通(舟運)で大消費地である江戸/東京に運んでいた ●益子から真岡市の柳林河岸まで馬で運搬。約15kmで車だと15分だが、馬を引いた徒歩では4時間以上はかかる ●馬の背に乗っている荷物は「藁」で梱包されている(ビルボードの写真でも確認できます)。2015年の第3回土祭の企画構想のために実施した益子全域の風土調査の一環で、聞き取りに行った濵田窯の濵田晋作さん(故人)のお話。「人によってやり方は違うが、自分たちは器を重ねる時にパッキンとして麦藁を挟み、全体を稲藁で包んで梱包していた」
元むらた民芸店・現益子町チャレンジショップ
添谷書店隣の益子町のチャレンジショップ(現在3代目の「畦花」さんが出店中)は、元々は民芸店。町が譲り受けて改修し、第1回土祭で開催する「榎本新吉流光る泥団子」のワークショップ養成講座などに活用され、本番では総合案内所はキッズアートガイドの拠点、益子の粘土を用いて佐官の技術によってなどに使われていました。その後、語り部の会の方たちの発表の場やパンの販売所などにも活用され、その後、令和3年度から益子町で飲食の起業を目指す人のためのチャレンジショップとして運用されています。
(ご参考)前回の応募記事はこちら。
土舞台
全5回開催された土祭で演奏会やマルシェなどに活用された「土祭広場」には、土祭の1つのシンボルとしての「土舞台」があります。多様な色の土を用いて「地層」をイメージして作られた土の壁と美しく仕上げ固められた舞台。横の道を車で通る時に、これが何か気になっていた人もいると思います。今回のツアー参加者の皆さんも、舞台に上がって地層の壁に触れて(冒頭に掲載した写真)、かつて行われた祝祭空間に想いを馳せながら感じ入っていらっしゃるようでした。ここでは、地層の壁は町民参加のワークショップで長い期間をかけて制作されたこと、監修や指導は飛騨高山在住の佐官職人・挟土秀平さんにお願いしたこと、プロデューサーの馬場浩史さんとディレクターの吉谷博光さんによって、会期の最終日、千秋楽の夜には舞台の上に「満月」が上り客席から見えるように設計されたことなどをお伝えしました。
(ご参考)第1回土祭については、益子町「土祭」ウェブサイトのアーカイブページでご覧いただけます。http://hijisai.jp/archive2009/
ランチタイムと語り合いの時間 「どんなふうに暮らしたい?」
土舞台から本通りへ戻り、ゲストハウス&コモンスペース「ましこのま」を訪問しました。ここの畳の間をお借りして、「ナチュラルベーカリー日々舎」のサンドイッチとゲーグルをいただきながら、今日の感想や、これからの暮らしのイメージなどを語り合いました。ほとんどが初対面の皆さんですが、まち歩きをしている間にも、共鳴しあうところもあったようで、長年の知り合いのように、いろんな話が弾んでいました。
お昼からもう1名、地域留学生として益子に滞在中の方も合流してくれて、初期の土祭の考え方と、益子でできる暮らしの接点を探る話から始めました。その際に使った、スケッチブック(紙芝居)は、この2枚です。


交流トークの時間には、移住の先輩でもある「ましこのま」のオーナーお二人も参加していただき、「挨拶から始まる近所付き合い」のことなど、体験からのアドバイスもいただけました。
最後に、お配りしていたツアーのしおりの最終頁に、今日感じたこと、考えたこと、これからどんな暮らしをしたいか?などを、今日の記念に書き残してもらい、一人ずつ語っていただきました。

参加の方々が語ってくれたことを、この記事を読んでくださっている皆さんにも少しだけ共有しますね。これから、どこで、どう生きていくか。そんなことを考える時の手掛かりになれば幸いです。
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参加の皆さんからのメッセージ
◎土地への感謝、収穫の感謝、循環。古代農業で大事にされてきた祭りを見直され、益子という風土を最大限に生かしたイベントが土祭だったことを、あらためて知ることができました。今も開催されてほしいという思いと、過去の振り返り、今日のようなイベントが毎年開催されると、益子の文化継承につながると感じました。
◎早瀬さん(ましこのま)のお話で、まずはご近所から、挨拶からというお話が、とても小さなつながりから大きな輪につながっていくなと思ったので、私も大事にしたいなと思いました。
◎まだ益子に来て間もないし、普段は自転車で町をめぐることが多いから、今日は、解説のお話も聞きながら歩けたので、シャッター商店街が、昔はどんな感じだったのかというのを想像することもできて、とても楽しい会でした。
◎益子ってなんだか不思議・・という思いが自分の中にあります。移住者が多くて、お店を営んでいる人も多くて・・・、その土壌って何なのだろうと思っています。ひとりで勝手に(笑)益子という町の研究をしているんですが、今日は最初の土祭のお話も聞けて、考察できそうだなというネタが増えました。
◎まだ益子に来て数ヶ月ですが、知り合った人から時々「土祭」というワードが出てきて「土祭ってなに?」とずっと思っていたんです。駅前のやたらと歴史がありそうでおしゃれな感じになっているのに開いていない倉庫とか、リノベーションをした建物が結構あったりとか、そういう「これは何なんだろう」と思っていたものが全部、今日のツアーでつながって、すごくわくわくしました。
◎自分自身のやりたいこととしては、季節を感じながら旬の食材を使って多くの人に料理を届けたいなという気持ちはあるんですが、その先に、こういう土祭のような自然と文化と暮らしを大切にしていけるような空間というか場所というか、そんなものを、いつかみんなで作れたらなという気持ちになりました。
◎長い間続いてきたことには、やはりそれだけの価値だったり、長い間続く仕組みがあったはずで、それが今の大量消費だとか効率化の時代の中で失われつつあるのだとしたら、それはすごく惜しまれることだと思っています。今日は本当に、いろいろな素敵な場所とか益子で培われてきた文化も紹介してもらったので、それをなんらかの形で残すことに協力したいという気持ちになりました。
◎今日は都合で途中からの参加でしたが、皆さんのお話を聞いていて、私も最初から皆さんと一緒の解説を聞きながら歩きたかったと残念な気持ちですが、でも、この交流の場だけでも、益子に移住して、この後のビジョンも見えている方とか、同じように益子に惹かれている方と繋がることができたので、この時間だけでも来たかいがあったというか、本当に開催していただいてありがとうございました!
◎私はスターネットの存在がきっかけで益子に通うようになったのですが、創始者の馬場さんが土祭1回目と2回目のプロデュースをされていて、今日、解説していただいた、馬場さんが大切にされていた「人が歩いていける範囲で成り立つ暮らし」ということは、いとんな人から馬場さんの考えとして聞いたことがありました。益子のPRを外に向けて発信することも大切ですが、外に向けてばかりいると、本当にもっともっと昔からの人の手が入ってきたことに触れられることとか、自然のめぐりの中でうまいこと歯車が合って続いてきたこととか、大事なことが損なわれてしまうような気がしています。自分もそういう暮らしにできるだけ近づいて、伝えていくことを益子でやっていきたいなと思いました。
(写真・文 簑田理香)
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お知らせ
「益子の「未知の日常」ツアー」第2回は、9月26日(土曜日)に開催します。テーマは「益子のカルチャー・コモンズ探検!」。応募フォームを開設次第、益子町公式LINEなどでご案内しますので、楽しみにお待ちください。