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〈ましこのごはん〉益子の日常を「農業」と「陶芸」、そしてそれらが交わる「食」の観点から、「ましこのごはん」として紹介します。
なすを育てる人~仁平瑞夫さんのなす~
なすを育てる 土地
なすを育てる仁平瑞夫さんは、益子町の田野地区小泉という地域で農業を行っています。
益子町には田野・益子・七井の3つの地区があり、ここ田野地区は、一番農業が盛んな地区。小泉は7月に小さな夏祭りを開きます。大人神輿と子ども神輿、お囃子でこの祭りを盛り上げます。この日、瑞夫さんは自治会の役員として各所で立ち働いていました。奥さんは料理づくりで忙しそう。急に祭りのことを尋ねても丁寧に説明してくれました。祭りのこと、地域のこと、土地のことを知ると、「こういうところで育ったんだ」と、急になすが身近になってきたような気がします。
なすを育てる 家族
生粋の益子人がつくるなす。奥さんと、時々お父さん、お母さんと、家族で育てています。
奥さんの恭子さんは、パートをしながらなす栽培を手伝い、おととし農家本格デビュー。でも・・・「虫がきらい」そして旦那さんの瑞夫さんは「朝は収穫で大事なんだけど、朝が弱い」らしい。何とも微笑ましいエピソードを話してくれました。
仁平さんの家は、益子町でも珍しいなすの専業農家です。そんな仁平さんが本格的になすを育て始めたのは5年前。
もともとJAで働いてた仁平さん。「あるとき、いきなりなす部会の担当になって。でも、なすのことが全然わからなくて、休みの時になす農家を訪ねたり、自分で育ててみたりして5、6年くらいやってたかな。そうやってるうちに、俺もなす作ってみたいなー!って思ってしまって」
なすを育てる 時間
「この白い部分が、昨日の夜成長した分」とまだ赤ちゃんの手くらいの大きさのなすを手にしながら教えてくれました。「なすは2回ごはんを食べているイメージかな。朝と夕方」なすは朝早い時間に収穫するそうです。理由は「昼間の暑い時間は人間もだるいでしょ?だからなすもゆるくなり、はりがない」からだとか。
生き物と一緒に育てる
茎や葉っぱにいるカエル。
「小さな虫が多いから、食べに来てるんだろう」と仁平さん。
「(虫を食べてくれて、)カエルと一緒に作業してる感じかな」
時に栽培を助ける存在も、冬にはいなくなってしまいます。受粉をしてくれる蜂も。
だから冬は受粉を人間の手で手伝ってあげる必要から、夏より時間も労力もかかります。
そして成長に必要な温度(約15℃)も湿度(約80%)も足りなくて、ハウスでの栽培は灯油を一日でドラム缶1本(200㍑)を使うほどエネルギーが必要です。
「冬になすを食べられるのには、人間が時間と労力とお金をかけて、夏のような環境を一生懸命に作ってあげているからなんだ」
なすを育てる 姿
「直売所の強みは(収穫後)すぐ出せることだよね。はりがある一番おいしいときに収穫してすぐに出せる。農家もおいしいものを食べてもらいたい。直接だから等級に関係なく値段も決められるのも嬉しい。消費者と生産者の距離が近いことも強みだよね。『おかわりがくる』っていうんだけど、名前で買ってくれるようになったり、この人のなすじゃなきゃだめなんだといわれたりする農家になれたら本物かな。別におかわりがくる事にこだわるって訳じゃないけどね」
「一日一日、実や葉っぱの形が変化するのが楽しい。農業は子育てみたいなもの。なすと触れ合う機会が多いと愛情も伝わって応えてくれる気がする。どれだけ畑にいるか、時間の多さが収穫するものに返ってくる」と言う仁平さん。
こんなに想いが込められて育てられたなすが手に入ることの嬉しさを改めて感じます。
次回は、仁平さんの白菜を使った料理に器を提供してくれた陶芸家:船越弘さんをご紹介します。