〈ましこのごはん 白菜編〉東京育ちで白菜農家に!!

ましこのごはん2018年04月13日

〈ましこのごはん〉益子の日常を「農業」と「陶芸」、そしてそれらが交わる「食」の観点から、「ましこのごはん」として紹介します。

 

白菜を育てる人~大塚昭夫さんの白菜~

『白菜1』の画像

 

第二の生き方として選んだ農業

 

大塚さんは東京で生まれ育ち、大人になってからはご両親のご実家のある益子に移り住み、益子で10年間、真岡で30年間サラリーマンをしていました。

サラリーマン時代はマッシュルーム栽培やガラス製造の仕事に就いていました。ガラス製造では製造効率を上げる特殊な技術を開発して評価を得ていたそうですが、ノルマや成果ばかりに追われる仕事にどこか違和感を覚えたといいます。

農業への興味や関心は40歳頃からあったそうです。いつかはすべて自分でコントロールできるような仕事がしたいと思い、やがて定年後は農家しかない!と強く思うようになったそうです。

『白菜2』の画像

 

 

 

最初はキャベツ

 

最初に作り始めたのはキャベツ。やり始めの頃は単なるお小遣い稼ぎの感覚だったといいます。

簡単に出来ると思って始めた野菜づくり。ところがいざやってみると難しく、失敗の連続でした。

もともと試行錯誤することが好きな大塚さん、色々と工夫をしながら自分自身のやり方を確立していく過程は苦にはならなかったようです。

「とにかく最初は色々な事を試しては失敗し、試しては失敗しての連続だった。でも、もともとが実験好きだから、あれこれ試すことはむしろ楽しかったよ。何でも興味が湧くと火がついちゃうし、とにかくしつこい性格だから向いてたのかもしれないよね。そうこうしているうちに見るに見かねてなのか、農業をしている周りの人が色んな事を教えてくれるようになったんだ。うまくいかないと植える土地を変えてみたり、途中から機械を入れるようにもなったり。機械は人が1時間かけてやる作業を10分程度でやってしまう。便利さに改めて驚かされたね」

作っているうちに野菜の種類も徐々に増え、人から注文をもらうようにもなったといいます。

「その頃からかな、趣味ではなく本当に仕事としての野菜づくりを意識するようになったのは」

 『白菜3』の画像

 

 

 

野菜づくりに絶対はない

 

とにかく型にとらわれず、様々な工夫をして野菜づくりと向き合う大塚さん。

「良い野菜を育てるためには植物と会話ができなくちゃいけない。これには経験が必要。様々な変化に柔軟に対応したり、発想の転換を行うことも大事。そういうことはサラリーマン時代のものづくりの経験が大いに役立っている。自分なりの工夫や努力が大事なんだ。人まねだけでは決して成り立たないんだよ」

『最初の肥料の量を多くして追肥はしない』

『旨味を凝縮させるために貯蔵して出荷のタイミングを計る。貯蔵の際には根をつけたままにしておくと野菜の成長が止まらないから旨味が増す』

などなど白菜をおいしく育てるための大塚さん独自の工夫がたくさん。それを語る大塚さんの顔は本当に楽しそう。

『白菜4』の画像

 

 

 

野菜づくりはイノベーション

 

「決まったやり方がない、ということが何よりも自分の興味を引き付ける。新しいことを試すのが楽しくて仕方ないし、うまくいった時の喜びがまた次への意欲にもつながるんだ。もちろん、失敗も多いけどね。そういう意味では野菜づくりはイノベーションの連続なんだよ。これは楽しくないわけがない。野菜のリクエストをもらったり、予約してくれるお客さんが増えてくることは本当に嬉しい。やりがいだよね」

定年後、最初一人で取り組んできた農業ですが、今は奥様も手伝ってくれて二人で作業しています。

これまでの苦労話やこれからやってみたいことを身振り手振りで楽しそうに語る大塚さんとその横顔を笑顔で見守る奥様の様子を見ていると、野菜づくりを通して夫婦で暮らしを楽しんでいるのが伝わってきます。 

 

 

『白菜6』の画像 『白菜5』の画像

 

次回は、大塚さんの白菜を使った料理に器を提供してくれた陶芸家:阿久津雅土さんをご紹介します。